主人公アムステルダムの意味とアメリカ建国の父・ピルグリムファーザーズたちの繋がり|映画ギャングオブニューヨーク ネタバレ(2002)

今作は2002年に公開されたマーティン・スコセッシが制作に関わる映画です。

また今作は、1928年に出版された「Gangs of New York」という本の実写化作品でもあります。

それに加え、Metoo運動のきっかけになったセクハラ行為=キャスティングカウチの加害者である映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインが制作に関わった映画でした。

1970年、スコセッシはハーバート・アズベリー19世紀のニューヨークの犯罪社会を描いた『ニューヨークのギャングたち』(1927年)に出会い、衝撃を受ける。当時、スコセッシは金も名声もない若い監督だったが、10年代の終わりには、古巣を描いた『ミーン・ストリート』(1973)や『タクシードライバー』(1976)などの犯罪映画が成功し、新星となった。1979年、彼はアズベリーの著書の映画化権を獲得したが、製作を進めるのに20年を要した。19世紀のニューヨークの巨大な街並みを、スコセッシが望むようなスタイルとディテールで再現することが困難であった。1991年の時点で、このプロジェクトは当初、ユニバーサル・ピクチャーズが3000万ドルの予算で出資する予定だった。しかし、同スタジオは1997年にこの企画の権利をディズニーに譲渡した。当時の会長ジョー・ロスは、「ディズニーをテーマにした映画にはふさわしくない」という理由で、この映画の過剰な暴力描写を断念したのである。スコセッシはこの映画をワーナー・ブラザーズに持ち込んだ。しかし、この映画はワーナー・ブラザースにも断られ、その後、20世紀フォックス、パラマウント映画、メトロ・ゴールドウィン・メイヤーにも同様に断られた[7]。結局、1999年にスコセッシは、有名プロデューサーでミラマックス・フィルムズの共同会長のハーヴェイ・ワインスティンと提携することに成功した[6]。[6] この映画には1億ドル近い大きな予算があったため、ワインスタインは必要な資金を確保するために、このプロジェクトの国際配給権をグラハム・キングのInitial Entertainment Groupに約6500万ドルで売り渡した。その直後、タッチストーン・ピクチャーズが国内配給の収益の一部と引き換えに、ミラマックスに出資した[7]。ジェイ・コックスがスコセッシに雇われ、映画化の脚本を担当し、2000年3月の『ニューヨーカー』で、スコセッシと共に9回の修正案を作成したと報告された[8]。

Gangs of New York – Wikipedia

スコセッシ監督は1970年から映画化を構想ていながらも、30年経った2002年にようやく完成まで辿り着いたそうです。

音楽産業が世界的な中心地と言える「ブロードウェイ」の歴史を調べる中で、「ファイブポインツ」という地域の名前を知り、その地域の歴史が描かれているということを知ったことから見始めた映画でしたが、想像を絶した「ニューヨークの腐敗ぶり」に今でも驚いています。

まさに崩壊直前のローマ帝国のようなモラルなき無法地帯が、100年くらい前のニューヨークの姿だったのです。

音楽産業をはじめ、現在の文化・芸術は、本当の心の安らぎや救いというものがなくなってしまっていますが、このような地域で生み出されたものが世界中に「素晴らしいもの」と宣伝されて広まったと考えれば、根本的に心を豊かにしないものだということがよく理解できます。

場所によると思いますが、「ニューヨーク」は最も滞在したくない場所、と考えるようになりました。

ともかく、良し悪しは別として、当時の街の雰囲気を体験できる映像作品としては一級品だと思います。

「ファイブポインツ」という「広場」がどのような役割だったのかということがよく理解できますし、1800年代に生きていた人がどのような現実の中にいたのかということがよくわかります。

同じ1800年代を舞台にした「若草物語」などとは違い、本当の庶民の姿がそこに見て取れます。

しかし、原作を全て忠実に描き出すことは当然ながら困難な作業です。

スコセッシ監督は、登場人物たちにそれぞれの「出自」と「思想」を反映させて、アメリカという国がどういった国なのかということを描きだしたのだと感じます。

史実に忠実ではないため「現実との大きな違い」がいくつもあり、このことは、Wikipediaでも言及されています。

しかし、それぞれの思想をそれぞれのキャラクターに落とし込むことで、初めて見る人でも、物語がよく理解できるようになっていると思います。

かといって一回見ただけで物事の前後関係がすっきりわかるというものでもないと思うので、「映画を見たけど、いまいちよくわからなかった」という人に向けて、映画と現実との違いをいくつか見ていきます。

映画と史実との大きな違い

  • クライマックス、暴動鎮圧のためのファイブポインツへの海軍の砲弾攻撃は全くのフィクションで、史実にはないこと。
  • 中国人は1840年頃にはアメリカに移住していたが、大規模な移住は1869年の大陸横断鉄道が開通した後から。中国人は苦人(クーリー。中国人、インド人中心のアジア系移民・出稼ぎ労働者の呼び名)として、アメリカの鉄道建設にも労働者として関わっていた。原作本によると1880年のニューヨークには700人の中国人が住んでいた。
  • ディカプリオ演じるアムステルダムの仇である、ビル・カッティングのモデルとなった「ウィリアム・プール」は、肉屋を経営していたが、人を殺したことはない。
  • ビル・カッティングのギャング団「ネイティブアメリカンズ」は、史実的には政党名で、ノウノッシングス党と近い関係だったことは映画と同じ。またビルのギャング団の名前は「バワリー・ボーイズ」で、映画で描かれる高いシルクハットとロングコートと長い髪に口髭というスタイルは、連邦政府を象徴する「アンクルトム」と同じで、これは「アメリカ人」のトレードマークのようなもの。
  • 史実と細かな違いはあるものの、ビル・カッティングの「飢饉移民のアイルランド系を嫌う生粋のアメリカ人としてのプライドを持っていた人物」「デッドラビッツとライバル関係」「反カトリック」などのネイティブズの描写は事実で、ビルはそれらを象徴とする人物として描かれる。
  • ビルたちが差別していた”ジャガイモ飢饉によるアイルランド移民”はヨーロッパからのアメリカ移住者のうちの”後発組”として肩身の狭い思いをしており、今作で描かれているようにタマニー党が彼らを掌握し長らく一体関係だった。現実には、同じ流れを汲む上流階級の一族であるジョン・F・ケネディの登場で、ジャガイモ飢饉以降の移住者が差別されるということは減っていった。(ちなみにジョン・レノンの祖父の代がこの「ジャガイモ飢饉によるアイルランド移民」でリバプールに移住した世代で、同じようにマンチェスターにもともと住んでいた人たちからは冷遇された経験を持つ)。
  • ケネディ家の不幸の原因か?上記のように、ジャガイモ飢饉以前にいたエスタブリッシュ(上級国民)らイルミナティと、後発組アイルランド移民のケネディ家には確執があった可能性もある。調べた限りJFKはあまりにも正義感が強い性格だったようで、JFKの父が仲良しだったマフィアの後ろ盾があって大統領になったにも関わらずマフィア排除をし、イルミナティ一族でありながら、イルミナティが嫌がることばかりをしているようにしか見えない。これら全てが、ケネディ家が徹底的に標的(家族親戚血族者の異常な不幸・暗殺)にされている根拠なのかもしれない。ジョン・F・ケネディはマフィアの掟に従い暗殺された

そのほかの描写は年代にズレがありますが、起きた出来事なども1800年代に、全て実際にあったこと。ということで、劇中の出来事を年表にしておきます。

年表

1846年|ニューヨークで「ファイブポインツ」の支配権をめぐる争い。ローマ・カトリックのデッドラビッツ(ヴァロン神父・アムステルダム勢力)とプロテスタント?のネイティブズ(ビル・カッティング勢力)。
1862年|16年後。NYブラックウェル島のヘルゲート少年院から”アムステルダム”が出所。奴隷制廃止の発端となった南北戦争の2年目。戦争が終われば奴隷制も終わると言われ信じられていた。リンカーンがアメリカの大統領になり、徴兵制を開始。ギャング集団「ネイティブズ」は黒人を嫌い、国民たちは徴兵制に怒りを抱いていた。アイルランド勢力がニューヨークに侵略=大飢饉のヨーロッパからアメリカへ移住。「アイルランドの侵略/アイリッシュインベンション」として嫌悪の対象になっていた。移民してきたアイルランド人も「黒人の仕事を奪う奴ら」と一部で言われた。アイルランド軍が行進。白人と黒人が平等であることを否定していたのがネイティブズ。♫「羽目を外そうぜ、俺たちは船乗り。ニューヨークの娘とポルカを踊ろう。」がビル・カッティングの店で歌われていた流行歌の一つ。
1863年
 1月|共和党のエイブラハム・リンカーン大統領によって正式に奴隷解放宣言
 2月3日|16回目のネイティブズの記念パーティ。アムステルダムがビルの暗殺に失敗。以後、完全に対立し、7月の決戦へ。選挙戦でノーナッシングス(ノウ・ナッシングKnow Nothing)=ネイティブズ対、タマニー(ウォルター・”モンク”・マクギン氏)=デッドラビッツという構図で保安官の地位を巡った選挙戦が展開。不正選挙のオンパレード。
 3月|連邦議会で初の徴兵法が可決
 7月|13日から16日。ニューヨーク徴兵暴動(ニューヨークちょうへいぼうどう、New York City draft riots)、別名にマンハッタン徴兵暴動。この日に、ネイティブズとデッドラビッツの「決闘」があったが、徴兵暴動の暴徒たちの鎮圧のため海軍がファイブポインツに砲弾を撃ち込んだことで、この決闘自体が混乱状態になる。ビルは爆撃の巻き添えにあい負傷し、”アムステルダム”・ヴァロンにとどめを刺され死去。
 *劇中の日本語字幕ではビルが死んだのが1860年になっているが、墓標の「3」の字体が独特なだけで、劇中ラストシーンは1863年であっている。(字幕制作者の誤植です)

設定・世界観

ビル・ザ・ブッチャー/モデルの一人はウィリアム・プール

ネイティブアメリカンズのリーダー。父はアメリカ独立のための戦争(「イギリス=アメリカ戦争(第二次独立戦争))の最中1814年7月25日に英国軍と戦い殺害された。そのために、戦わずしてアメリカにやってきたジャガイモ飢饉が原因のアイルランド移民を嫌悪している。モデルとなった史実の人物はウィリアム・プール(William Poole)で、史実では、アムステルダムが少年院から出所する2年前の1860年に死んだことになっている。左目が義眼。連邦政府のリンカーンの政策、奴隷解放とカトリックのアイルランド移民を嫌う。

アンクル・トムの小屋(演劇の演目)

カッティング率いるネイティブアメリカンズは、この興行を通して、連邦政府を攻撃する。自らが主催する興行で「アンクル・トムの小屋」を上演し、観客の中にサクラを仕込み、上演の最後に観客たちが劇の内容にヤジを飛ばし暴動を起こすように仕向けている。この際にビルは暗殺されそうになるが、アムステルダムに助けられる。

アイルランド移民

飢饉で何も持たずにアメリカ、ニューヨークへ連れてこられ、男性のほとんどは軍隊に所属し、訓練され生き抜くために「モラルを捨てるか、精神がおかしくなるか、戦死するか。」という状況下だった。毎週15000人がニューヨークにやってくる。市民権と入隊の書類への署名は「ばつ印」だけで済んだ。♫「新大陸に渡れば、ひと財産築ける。ヤンキー大陸に着いたら手に銃を押し付けられ さあ、お前も戦えリンカーンのために」

デッドラビッツ

のちに最も劣悪な環境のアパートと称される「オールドブルワリー」が拠点。1862年ころすでに悪の巣窟と言われ、貧困層が暮らしている。この建物には巨大な地下施設があり、カタコンベもある。宗教はローマ・カトリック(=島津十字)で、リーダーはヴァロン神父。ヴァロン神父の生まれはアイルランドのケリー県(愛: Contae Chiarraí、英: County Kerry)。息子が主人公のアムステルダム。宣教師(Pastor)Raleighがこの「オールドブルワリー」でで宣教。アムステルダムの代にタマニー党と協力関係になり、数百人を殺した男・ウォルター・”モンク”・マクギンを保安官候補として出馬させる。1846年頃の同盟はオコネルガーズ、プラッグアグリーズ、シャツテイルズ、チチェスターズ、フォーティシーブス。ヴァロン神父の息子が「アムステルダム」を名乗っていることから、ビルたちの仲間であることを強調した名前。ニューヨークのオランダ植民地時代の名前が「ニューアムステルダム(1626年〜1667年・この後はイギリスが支配しニューヨークに改名)」。キリスト教プロテスタントである「ピルグリムファーザーズ」は、イギリスでの迫害から逃れる際にオランダ(アムステルダム、ライデン)に12年以上暮らし、その後イギリスのサザンプトンからアメリカ大陸を目指した。ピルグリムファーザーズは「アメリカ建国の父」なので(おそらく)カトリックではないビル・カッティングらが「アムステルダムやオランダ」を象徴している。ブロードウェイを通したのはオランダ人。ウォール街の名前の由来は、オランダ時代のニューヨークで侵入者に備え「防壁を張り巡らした」ことから。

ピルグリム・イン・ライデン 総合目次

ニューアムステルダム – Wikipedia

ネイティブ・アメリカンズ(通称:ネイティブズ)

生粋のアメリカ人と自称する一団。1846年にNYのファイブポインツで、周辺地域の支配権を手に入れる。リーダーは”ザ・ブッチャー”と呼ばれるビル・カッティング。愛称の由来は肉屋・ブッチャーから。ビルの父親は1814年7月25日、イギリス軍との戦いで死去。カッティングはファイブポインツの全てから「税金・上納金」を受ける実質的な支配者。カッティングたちは市警察と組んで中央警察の支配が及ばない「船の上」でボクシング興行を行う。この時の興行主がP.T.バーナム。メンバーの一人にマグロイン McGloinという名字の人物がおり、この名前はアイルランド系(Mc は「〜の息子」という意味。Gloinの息子)で、おそらくジャガイモ飢饉以前からNYにいるアイルランド系でありピルグリムファーザーズと近い関係にある様子。ネイティブズの拠点は悪魔のサーカス(Satans Circus)という酒場。ヨーロッパ人がアメリカ大陸略奪をし始める前から住んでいたアメリカの原住民族の呼び名であるアメリカインディアンやネイティブ・アメリカンとは無関係。

ニューヨーク ブロードウェイの興行主P・T・バーナム

ビル・カッティングのボクシングゲームや、チャイニーズパゴダで毎年行われるネイティブズの記念パーティの取り仕切りもバーナム本人が行なっている。史実としてはバーナムはヴィクトリア女王と謁見し、地上最大のショウ=サーカスの興行主であり、心霊主義ブームを流行らせた張本人。また歌手のジェニー・リンドと一晩1000ドルで150の公演を行い、サーカス列車の考案者でもあり、アフリカ象のジャンボ、チャールズ・ストラットン=親指トム将軍を大ヒットさせた。他にも本当かどうか怪しい160歳の黒人奴隷ジョイス・ヘスで一儲けし、心理的誘導術の一つバーナム効果(占い師など術をかけて相手を支配しようとする人物に信頼感を湧かせる心理学の一つ)などに名前が残る。南北戦争前後のアメリカのエンタメ業界を主導していたような人物。彼の弟子に後にブロードウェイいちの興行主となるトニー・パスターがいる。徴兵制反対を主張する庶民が引き起こした暴動によって、バーナムの「バーナム博物館」が出火した様子も描かれる。ヒュー・ジャックマン主演の映画「グレイテストショーマン」でもその辺りの経緯が描かれるが、なぜ火事になったのかはっきりした原因は描かれていない。

NYブラックウェル島のヘルゲート少年院

キリスト教系の少年院。この施設ではアジア人(中国系の顔立ち)の数人が、奴隷のような形で使役させられている。

タマニー党

党首はウィリアム・トゥイード氏。民主党政治団体が「タマニーホール」につどう。タマニーファミリーは味方だと言って「移民」を取り込む。カッティングと党員はズブズブだったが、アイルランド移民を良しとしないビルとは反りが合わず、復活したアムステルダム率いるデッドラビッツと手を組む。港に行って移民たちに無償で食事を与えて党員に取り込むことで、基盤づくりをしている。警察は「善良な組織」なので「ネイティブズ」と手を組み、警察ができな裏の仕事をネイティブズに行わせる。「毎月ニューヨーク市に5000ドルの請求を出す。その請求額の10%を見返りに支払う」とタマニー党首が髭面の巨漢の男性に伝えている。民主・タマニー党のトゥイード氏は終始、人間を「票」としか見ていない。住民からの犯罪の苦情(タマニー党が犯罪を見て見ぬふりをしているなど)が多いことから、見せしめとしてどこの組にも属さない人物を、適当な罪状をつけて絞首刑にするという文化がある。タマニー党の名前の由来はインディアンの首長TAMANEND。タマネンドの支配地の中心がフィラデルフィアだった。タマニー党の祝祭日はメイデー(5月1日)。トゥイード曰く「選挙は投票用紙の数じゃない。票を数える者が左右するんだ(この時点で有権者数より得票数が上回るというおかしな現象になっている。一人につき数票入れることが常態化している)」。

ノウナッシング党

ニューヨークの新たな保安官を決める際に、ビルの政党と結託したのがノーナッシングス(ノウ・ナッシングKnow Nothing)党。史実ではこのノウナッシング党のメンバーが設立したのがゴールデンサークル騎士団(通称KGC)で、映画「ナショナルトレジャー2/リンカーン暗殺者の日記」に登場する秘密結社で、いわゆるフリーメイソンなど悪魔崇拝者たちの集まり。

ファイブポインツ

殺人横丁、煉瓦礫屋敷、地獄の入り口と呼ばれる地域のこと。中心の広場は「パラダイススクエア」と呼ばれる。マルベリー、ワース、クロス、オレンジ、リトルウォーターの五つのストリートが交わる場所。学校、病院、下水整備、道路建設、修理と清掃、酒場の免許などこの地域では全てビル・カッティングの許可がなければできない。上流階級が住む5番街のスキャマホーン一家も訪れる。19世紀中頃のファイブポインツでは、火事が発生すると、それは、モノの奪い合いの開始の合図。警官になっているのは、かつてネイティブズに負けた側に加勢した日和見的な暮らしをするチンピラ。停泊している貿易船を狙った強盗も常態化しており、そこで見つかった遺体を転売するというビジネスも発生している。死後4時間の遺体が15ドルで売られる。買い取っているのはメディカルサイエンス(医学・科学医療)に関わる人物。すでにこの時点で中華人(中国人)たちはモットストリートに暮らしている。

ローマ・カトリック

タマニー党とビルによる絞首刑が執行された日の夜に、カトリック系の改革団体が慈善ダンスパーティを開催。その内容は乱行パーティのお行儀よいバージョンのようなもの。

火事が起きたら

消防団を名乗った各地区の集団がやってきては、火事になった家のものを盗み、また燃えていない隣の家にも入り込み強盗を行う。これには、ギャングの「ネイティブズ」や正義ヅラをした警察も関わる(意図的に放火して、盗みをするのがネイティブズが勢力を拡大する方法らしい)。小さなギャングたちは盗品の中からネイティブズに上納するが、その前に、警官にも盗品を奪われることがある。警官は以前ネイティブズの敵側・カトリック側だった人物(ハッピー・ジャック)。

ファイブポインツの近隣の組一覧

これらの組のいくつかは、ネイティブズに上納金を払っている。主に上納金は火事の際のどさくさで盗んだ金品。

  • 赤い色の服のバワリーボーイズ
  • 川を縄張りにするデイブレイクボーイズ
  • 船乗りを誘拐するフロッグホローズ
  • 酔っ払いの財布を狙うチャツテイルズ
  • 自分が経営する店のお酒を飲み一文なしのヘル・キャット・マギー
  • 誰とでも寝て相手をする娼婦を牛耳るナイトウォーカーズ
  • 唯一ナイトウォーカーズと話すのが田舎訛りがひどいプラッグアグリーズ
  • ただの酔っ払い連中のブロードウェイツイスターズ
  • 肺病持ちで人に血痰をかけるゴキブリ・ベンをリーダーに据えるリトルフォーティシーブス
  • 英国人を罵り続けるブルーアメリカンズ。

NYの中国人/スパロウズ・チャイニーズパゴダ(グランドオラトリー=大礼拝堂)

ネイティブズがファイブポインツの支配権を手に入れた1846年の祝日を祝う場所がチャイニーズ・パゴダ。成立前の中国人街・チャイナタウン近辺のモット・ストリート沿いにある。この祝日を祝うパーティはP・T・バーナムが取り仕切り、中国人たちもスタッフとして参加している。中国人たちもネイティブズを嫌っている。表向き中国人たちは、ニューヨークで対立する勢力(白人系)のどことも関係を持っていないので、決闘の前の話し合いなどを行う場所としてこの礼拝堂が度々利用される。また、選挙の際は、ネイティブズが支援するノウナッシングス党に投票をするように脅され、投票所に強引に連れて行かれる。ちなみに史実では、1858年頃からニューヨークに中国人が住み始め、1880年にはこの地域の中国人の人口は700人を数えた。ニューヨークの中国人たちは、オモテの家業の裏で、阿片窟や賭博場を経営し、そのための勢力争いが絶えず、中国人移民廃止法が1882年に決定する。

ユグノー

デッドラビッツのルーツを探るとピルグリムファーザーズに行き着く。リー・ド・フォレストなど実在の人物の祖先が「ユグノー」としてアメリカに来た一族とされている。ユグノーは宗教迫害でフランスのフランドル地方からアムステルダムに移住し、商工業と金融業で経済発展に寄与した思想を持った人々。ユグノーとはプロテスタントのうちのフランスのカルヴァン派のこと。イングランド銀行、アムステルダム銀行と深く関わり、ルイ王政の金庫番とも言える勢力。そのうちのイギリスにいいたユグノーたちが「プリグリムファーザーズ」としてアメリカ建国の父と言われた。このピルグリムファーザーズは百人足らずで、彼らがアメリカに来る前に12年以上滞在したのが、オランダのライデンやアムステルダム。この中のおよそ40の上流階級の家系を「ボストンバラモン」や「アメリカ建国の父たち」と呼ぶ。ルイ王政時代のローマ・カトリックのリシュリー枢機卿(1585年9月9日 – 1642年12月4日)を支えていたのがプロテスタントのユグノーとユダヤ人だった。そのためか、今作のデッドラビッツのリーダーのヴァロン神父も、ローマ・カトリックとして描かれる。ルーツを辿るとプロテスタントになる(悪魔崇拝者たちは信仰のために宗教を信じていないので宗派が違っても関係なく利害が一致すれば協力し合う)。ピルグリムファーザーズの子孫は「アメリカ大統領ユーリシス・グラントやフランクリン・デラノ・ルーズベルト、ジョージ・ブッシュ、バラク・オバマたちの先祖」
ピルグリム・イン・ライデン 総合目次

そのほかの世界観・設定

検疫と盗み|ポルトガル船が3週間の検疫の間に、ネイティブズ配下のギャングの襲撃にあい、品物を盗まれる。さらに船に残された死体は病院へ売られる。死後4時間の死体が15ドル。

新聞業界大手トリビューン誌|オーナーはグリーリー氏。トリビューン誌の社屋はパーク・ロウに所在。暴動により焼き払われる。

黒人のタップダンスのような踊りとバンジョーとフィドルの伴奏音楽|1862年頃のニューヨークでは、黒人とアイルランド人のダンスミュージックが融合した頃。黒人は奴隷だったが、この頃きたアイルランド人も奴隷のような身分。ビル・カッティングの店で、白人が演奏する音楽で、黒人が踊っているシーンがある。またデッドラビッツが戦いに臨む時の音楽は、笛と太鼓のみの音楽。

「イギリスの聖書を書いたのはシェイクスピア」というセリフ|アイルランド人のローマ・カトリック系の登場人物ウォルター・”モンク”・マクギンがいう。

スリの名手ジェニー|12歳で母と死別し、男に強姦され妊娠するが子供をおろす。ビルに拾われ、それ以来上納金なしでファイブポインツで暮らしている。スリの手法の一つ「キジ鳩」は、金持ちの家にメイドの姿をして裏口から入り込み、金品を盗んで逃げる手法。度胸がなければできない方法。ジェニーを演じているのはキャメロン・ディアス。

またこのあたりのことをもっと詳しく知りたい方は、原作の小説がおすすめです。この当時、いかにニューヨークが腐敗していたかをいやというほど緻密に描写しています。

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