みにくい。
その言葉がすべてです。
この映画はすべてが醜い。人間が持つ罪を昇華できない愚かな人間たちの愚行の数々。
人を正しく疑うことを知らない、渡辺謙演じる洋平と妻夫木聡演じる優馬。
酒に酔い、女性を守ることができなかった佐久本宝が演じる信也
社会の「怒り」をすべて背負わされ、正しい解決方法を見つけ出すことのできなかった森山未來が演じる田中信吾。
どこにも救いがなく、虚無感しか残さないこの映画。個人的に感じたことを書き綴っていきます。
映画「怒り」キャストをご紹介
千葉編キャスト
槙洋平/渡辺謙 千葉の漁港で働いている男。愛子が田代哲也と付き合うことを不安視している。
槙愛子/宮崎あおい 洋平の娘。父が働く漁港に務める田代哲也と交際している。
田代 哲也/松山ケンイチ 洋平と同じ漁港で働き愛子と交際。前歴不詳。
明日香/池脇千鶴 愛子の従姉妹。しっかり者で洋平を支える。
東京編キャスト
藤田 優馬/妻夫木聡 大手通信会社勤務でゲイ。直人と交際しているが直人を疑う。
大西直人/綾野剛 優馬と交際。前歴不詳。
薫/高畑充希 大西直人と密会している謎の女。
藤田 貴子/原日出子 優馬の母。 末期がんを患いホスピスに入院している。
南條邦久/ピエール瀧 事件を追う刑事
北見 壮介/三浦貴大 事件を追う刑事。南條の部下
沖縄編キャスト
田中信吾/森山未來 沖縄の無人島で暮らしている。前歴不詳。
小宮山泉/広瀬すず 沖縄の離島へ移住。田中と出会う。
知念辰也/佐久本宝 泉のクラスメート。
映画「怒り」感想。見せ方の素晴らしさ。
物語が同時進行して繋がっていくという作品は多々ありますが、この作品での見せ方は非常にワクワクするものがありました。
犯人が犯行に及んだときの映像が何度も流されますが、最後まで顔は完全に見えない状態で、この後姿は綾野剛だろ!とか、この角度だと森山未來だな。とか、さらに松ケンにも見えてきて本当に誰なのかは最後までわかりませんでした。
結果としてこの物語の本筋は広瀬すずが演じる、小宮山泉という女性が中心据えられているように見えます。
彼女に思いを寄せるクラスメートの辰也の純粋な人柄と、完全に精神的に崩壊している森山未來演じる田中信吾との三角関係が、何よりも恐ろしいです。
米兵に襲われた泉も、精神的に異常をきたしている田中信吾も、社会の常識のようなものによって苦しめられ、知念辰也は裏切られたことが許せず、自分に負けたのでした。
モラルが崩壊しすぎていて、この映画を見ると正しいことが何なのかわからなくなりますが、そもそも、殺人をすること自体がおかしなこと。そして、人を信じてその人間に裏切られたからと言って復讐をしてしまう、知念がしたこともまた完全な罪。
人を完全に信頼しきった自分自身を恥じて、悔い改めるべきです。
リンゼイ・アン・ホーカー殺害事件の市橋容疑者との関連。米軍という黒歴史
田中については非常に複雑な問題が潜んでいて、この田中のモデルは外国人女性を殺害して2年7ヶ月の逃亡生活をして話題になった市橋達也だと言われています。
市橋達也の事件はなんとなく知っていて、映画「怒り」を見る前にディーン・フジオカが監督、主演を努めた映画「I am ICHIHASHI 逮捕されるまで」 も見ていたので、より深くそれぞれのキャラクターに入り込んで見ることができました。
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2017年4月期のドラマ「女囚セブン」で剛力彩芽演じる主人公の決めゼリフに「罪を犯すやつがわるいんやない。罪を犯させるやつが悪いんや」というのがあります。
市橋達也事件の見方は一つ間違えば、本人は悪くないと責任転嫁にもなってしまいますが、一番のポイントは、彼の精神の状態を作った社会という場所にも、罪の一端があるといえるところです。
その人間が、頭のなかで何を考えるようになるかと言うのは、生まれてから関わる親や親族、兄弟や、学校や友人、知り合い。その全てがその人の思考形成に関係しているという視点を持ったとき、市橋達也容疑者が、外的要因によって殺害して、しかも逃げたという、一般常識では測ることのできない異常性が、出来上がっていきます。
そういった視点で、映画「怒り」を見ると、田中の心に怒りという感情を常にとどまらせたのも、育ってきた環境に関連があるはずです。
そういった意味で、すべての人に田中のような狂気は存在する可能性があるということ、ただ単に悲惨な事件が起きたということだけがこの映画の主眼ではなく、誰もが同じものを持っているという状況で、加害者になるのか、被害者になるのか、その違いは何なのか。
そして、なぜ人は罪を犯すのか。なぜ罪を根絶できないのか。
そして、この負の連鎖に入らないために、心を悪魔に支配されたのはどこまでも自分自身のせいだと悟ることが、私のこの映画を見ての感想です。
米軍基地の問題も含め、実際にこのような事件がここ日本で起きていて、今でもその根絶はなされていません。
鑑賞後の特殊な虚脱感。
このような残忍で、悲しみしか残さないようなことが二度と起こらないようにと、この映画から学ぶことはできます。
広瀬すずが演じた泉という登場人物に自分を重ねたとき、叫ぶことよりもっと強烈な絶望感にさいなまれることになると思いました。一体生きていて何がいいことなのだろうかと、虚脱感で生きることを放棄してしまうはずです。
全く希望のない恐怖しか残さない作品。二度と見ようとは思いません。
しかし、広瀬すずのキャリアの中で演技の幅を広げるという意味で貴重な作品になったことは間違いないでしょう。
2 件のコメント
やべーよ
なーるほど