ドラマ【みかづき】ネタバレ。高橋一生と永作博美のコミカルな演技が冴え渡る、塾のカリスマ夫婦の物語

2019年1月26日からNHK総合放送のドラマ【みかづき】。

ドラマ「僕らは奇跡でできている」で初主演ながら感動的な数々のシーンを残してきた高橋一生。

高橋一生が今作の主演となったのが、ヒロインに抜擢された永作博美とともに、物語を阻害しないコミカルな演技が評価され、キャスティングされたのだといことが、第一話を見てはっきりとしました。

ここでは実話を元にコミカルな脚色が見どころの、ドラマ【みかづき】のあらすじを1話から最終話の5話までを紹介しています。

第1話|一歩踏み出せば自身はついてくる。吾郎と千明の出会いと開塾まで

伝説の塾講師・大島吾郎(高橋一生)と塾経営のカリスマ・赤坂千明(永作博美)の孫、上田一郎(工藤阿須加)。やりたいことも見つからずに就職活動に明け暮れていた一郎は千明の臨終に立ち会い、「人に流されずに自分の頭で考え、やりたいことをやれ。」と言われる。

一年後、この世を去った千明。

一郎は流されるがままに生き、お弁当配達の仕事をしていた。そこでシングルマザーの娘・美鈴が算数のテストで悪い点数を取り、塾に行きたくてもいけないという家庭がある現実を知り、なんとか解決できないかと祖父・吾郎に相談する。

自信がないことを吾郎に見抜かれた一郎。その時吾郎はある「家族の物語」を執筆中だった。一郎は見開きに「この物語を不肖の孫である一郎に捧ぐ」と書かれていた原稿をめくり読み始める−。

1961年(昭和36年)。千明の娘・蕗子(黒川芽以)が小学生だった頃。千明は勉強のできない蕗子のクラスメイトの子・平太を助けようと、家庭教師の仕事の合間に勉強を教え、1日で50点を取らせてみせると豪語する。しかし成果は上がらず相変わらず0点を取り続ける平太だったが、ある日突如50点を取ることができ「平太くんは遅咲きだった」と喜ぶ千明。しかし蕗子によると、千明の教えではなく、巷で話題の「大島教室」のおかげで点数が上がったのだという。大島教室は小学校の用務員だった吾郎が自主的に始めていた塾のようなもで、放課後には吾郎の用務員室に子供達が溢れかえっていた。

成績が伸びると話題で保護者の間でも大人気の大島教室。「素人にそんなことができるはずがない!」と疑いを抱く千明。蕗子に偵察をさせた千明はついに五郎に直接対面する。そこで吾郎が、子供の集中力を養うための「瞳の法則」など、子供をよく観察することで成果を上げていたことを千明は知り、国の監視外で塾をやりたいという千明と吾郎は意気投合する。いずれ勉強によって得た知力は武器になる。と、思いを共にする二人だったが、その帰り道、千明は吾郎が子供たちの母親と肉体関係を持っているということを知って驚く。

そんな時千明は母・赤坂頼子(風吹ジュン)から、かつて嫁いでいた家から戻る時の「手切れ金」を受け、これまで使わずにいた「大金」を千明に投資すると言われ、かねてから抱いていた「学習塾」を立ち上げるために使うことにする。

千明はまず初めに「用務員の吾郎は保護者と通じている破廉恥な男」という事実を小学校に密告文で送りつける。校長から即刻クビを言い渡された吾郎を待っていたのは千明。そのまま借りたばかりの貸家に連れて行かれた吾郎はそこで千明に一緒に塾をやってほしいと言われる。「学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在」お金も自信もない吾郎と、自信はあるが鋭い観察眼を持つ吾郎を必要とする千明。実は吾郎に惚れていた千明の強引な色仕掛けとともに塾を始めることになった二人・・・。

翌年の1962年に始まった二人の学習塾。高度経済成長の影響で子供たちの勉強に力を入れる家庭が多くあり「八千代塾」は大盛況。しかし、1964年。順調に思えた塾経営だったが、世間で塾は「悪徳商法」と言われ、千明の娘・蕗子もまた「ジュク子」と言われいじめにあっていた−。

「自信なんてなくたってなんとかなる。まずは一歩踏み出すことだ。」

そんな一文を吾郎の書いた原稿から拾い上げた一郎は、後日、美鈴に数学を教えてみると、美鈴はこれまでできなかった計算ができるようになるのだった・・・。

第2話|家族と仕事、蕗子の「決断」

蕗子の息子・上田一郎(工藤阿須加)が塾に通う余裕のない小学生・美鈴(田牧そら)に数学をおしえはじめてひと月。ついに満点を取ったことから一郎は「先生」と呼ばれ、美鈴の友達にも勉強を教える羽目に。祖父・大島吾郎(高橋一生)の原稿を読み進める一郎に「後戻りはできない」という一節が飛び込んでくる。赤坂千明(永作博美)と結婚し、家族ではじめた塾経営が軌道に乗り始めた吾郎だったが、早くから母を亡くし、父にも夜逃げされたと言う過去を持つ彼が、当時何よりも願っていたのは「家族を守りたい」という思いだった。

オリンピック景気に沸く1964年。塾は「悪徳商法」と噂され、蕗子は「ジュク子」とイジメにあいながらも、経営が軌道に乗り合併を考える千明の前では言い出せずにいた。大手塾に対抗するには合併するしかないと考える千明は、吾郎と対立。吾郎は千明が合併しようとしている「勝見塾」の講師、勝見正明(勝矢)と意気投合しながらも、目の届く範囲で、家族が一緒にできている現状が幸せだと、二人の意見はすれ違う。

そんな中蕗子が行方不明に。吾郎は蕗子を探す中で千明の合併の狙いが、教えることに向かない千明自身が裏方に回り、家庭の時間をもっと大事にしたいと考えていることを知る。同じ想いを抱きながらも方法が違っていた吾郎と千明。蕗子を見つけ、学校で蕗子がイジメられているという事実を知った二人は、蕗子の願いを叶えるため、家族三人で遊園地や海に遊びに行く。その帰り、蕗子は将来「八千代塾」の講師になり、吾郎の助手になると二人に約束する。

家に戻った三人を待っていたのは「八千代塾」に入塾したばかりの子供、小川武(大竹悠義)とその父・小川(平山祐介)。小川は建築業でオリンピックの仕事をしているため、オリンピック後は収入が減り、塾を続けることができないという。勉強が楽しかったと涙する武を見ていた吾郎は「合併して月謝を引き下げることができれば続けられるか」と小川に問いかける。それならば続けることができる、と答え、喜ぶ小川と武だったが、その脇で話を聞いていた千明にとっても嬉しい吾郎の決断だった。

それから12年後の1976年(昭和51)。蕗子(黒川芽以)は大学生、次女の蘭(蒔田彩珠)は中学生、そして三女、奈々美(小菅汐梨)は小学生になった大島家。勝見塾との合併後も経営はうまくいき、「八千代塾」は一軒家を校舎とし「八千代進塾」と名前を変えていた。

吾郎に詳細を伝えずに船橋に二校目を開校しようとしていた千明。そしてそれは、蕗子が塾の講師となることが条件であったが、当の蕗子は、かつて八千代塾のアルバイトから文部省に就職した泉(須賀健太)と同棲をして、春から小学校の教師になることをすでに決めてしまっていた。蕗子から相談を受けた吾郎は、後日千明との話し合いの場をもうけるも、千明は「忙しい」と蕗子の話に取り合わず、二人は険悪なムードに。

「お父さんはいつもお母さんを見てた。でも、お母さんはどこを見ているの。私にはわからない。」家族のために塾を大きくしようと頑張ってきた千明は、又しても自分が家族と向き合えていないことに気づき涙する。

そんな千明は吾郎を探し町の古書店にやってくる。しかし、古書店で店員の一枝(壇蜜)から強引に本を勧められる吾郎を見て千明は躊躇し、声をかけられずにいた・・・。

第3話|吾郎の本出版と一人の女性。受験戦争と塾の生き残り。

かつて教えていた子供達の母親たちの押しを断りきれずに関係を持っていた大島吾郎(高橋一生)。

1976年。小学校の教員とを目指す上田蕗子(黒川芽以)と仲違いし悔やむ千明(永作博美)が町の古書店で目撃したのは、吾郎が古書店の女性店員・一枝(壇蜜)に強引に本を勧められているところ。蕗子のことを相談しようとしていた千明は、声をかける事もできずにいた。

一枝から借りた本に触発され、一枝の力添えもあり「教育の原点」について書かれた本を出版することになった吾郎。

さらに、「八千代進塾」の二校目を立ち上げるという中、蕗子は交際をしていた泉(須賀健太)を家に招き、千明たちを前に泉と結婚すると宣言する。しかし、それは蕗子の早とちりで、官僚の父と両家の出の母を持つ泉は、交際を認められてすらいなかった。塾に対して肯定的な意見を持っていた泉だったが、これを機に蕗子と別れることなってしまう。

小学生の4割が塾に通うほどまでになった1979年。世の中では「受験戦争」がますます深刻化。吾郎が目指す「子供の探究心を呼び覚ます」ような教育とはかけ離れた風潮となっていた。

そんな中、吾郎が出版した本がベストセラーになり記念パーティを開くことに。パーティに出席していた一枝は、田舎に帰ることを吾郎に告げる。吾郎に想いを寄せる一枝だったが、吾郎は「気づかない思いもあった」と回想する。

「千葉進塾」と改めた吾郎たちの塾。そんな最中、二校目「船橋校」の立ち上げから働いていたベテラン教員がライバル塾に引き抜かれてしまう。その穴を埋めるべく船橋校の教壇に臨時で立った吾郎は、そこで「千葉進塾」が進学塾へと変貌していることを初めて知る。

その日は千明の母・赤坂頼子(風吹ジュン)の誕生日で、千明と吾郎は娘たちとの約束どおり帰宅する。しかし、二人は小学校の教員となった蕗子や次女・蘭(蒔田彩珠)、三女・奈々美(小菅汐梨)の前で口論となり、吾郎と千明のこれまでの不仲に嫌気がさした蘭は家を飛び出し、その際に怪我をしてしまう。

散々な頼子の誕生日。吾郎は蘭に付き添った病院で、頼子が癌を患っていて、これが最後の誕生日だったかもしれないということを知る。これは、吾郎が本を出版するために奔走していた時期に診断されたことだったが、蕗子たちが吾郎の「本を出版する」という夢を叶えて欲しと、内緒にしていたことだった。

その後、入院の世話に来ていた吾郎に頼子は「これからはあなたの人生を歩んで欲しい」と言葉をかけ、1979年の初夏、67歳で生涯を閉じる。

「好きだから頑張っちゃうのよね」蘭が怪我をした頼子の誕生日の夜、「お母さんはお父さんのことが嫌いなの?」と奈々美に聞かれ、そう答えた千明。しかし、時代は待ってはくれず千明は非情な決断を下さなければらなかった。

それは、ライバル塾に負けないために、節税対策として自社ビルを建て、さらに受験塾として「千葉進塾」を生まれ変わらせるという決断だった。当然吾郎と意見が対立し、「塾長を退きます」という言葉とともに吾郎は千明と蕗子たちの前から姿を消してしまう。さらに、この状況を聞いた蕗子もまた家を出て行くという。

「お母さんのバカ、バカ。。。」奈々美に言い寄られながら、千明は窓から見える三日月を眺めていた。吾郎もまた同じ月を眺めていたが、かつて夢を語り合った二人の姿は、はるか遠くの昔、決して取り戻すことのできないもののように感じられた・・・。

第4話|吾郎の帰還。塾の次は「学校」と言う千明の夢

大島吾郎(高橋一生)と蕗子(黒川芽以)が飛び出してから三年後の1983年。自社ビルを津田沼に構えた千葉進塾は首都圏に支店を複数展開し4000人もの生徒が在籍する進学塾となっていた。次女の蘭(大政絢)は理事長代理の役職で千葉進塾でアルバイトとして働き、塾長の千明(永作博美)は教壇を降り事務仕事に専念し家庭の時間を作ろうとも考えていた。時はまさに「津田沼戦争」の最中で、新しい私塾を狙った嫌がらせなども横行し、千明もその対応に追われる。

そんな中、千明は、勉強する意味を見出せず「高校にはいかない」と言う中学生の三女、菜々美(桜井日奈子)と喧嘩してしまう。

ある日、千葉進塾稲毛校の教師がストライキを起こし、吾郎を慕って教師として働いていた小笠原(阿南健治)を筆頭に、条件を受け入れくれなければ授業をボイコットするという。小笠原は塾に少なからずいる「落ちこぼれ生徒」を見過ごしている千明のやり方に「文部省と同じだ」と激しく批判する。その後、授業をサボっている生徒を目撃した千明は、勝見正明(勝矢)から教師を辞めると伝えられる。吾郎に惚れ、大島夫妻と塾を育て上げてきた勝見は、吾郎が辞めた時から辞職を考え、塾が軌道に乗ったこのタイミングに子供のために働ける仕事にチャレンジしたいと言う。

「私なんかよりすずっと惚れてたでしょ」そう勝見に言葉をかけられた千明は、その後一人残った事務室で涙をこぼす。「人生は生きる価値があると自分の人生を持って教えること」と言う母、頼子(風吹ジュン)からの教え、「変わったのは君だ」「二割の生徒を見捨てるようなことはしたくない。」と言う吾郎の言葉、「落ちこぼれた者を切り捨てるな」と言う小笠原、「放任なら最後まで放っておいて」と言う奈々美の言葉。それらが全て千明の頭の中を駆け巡る。

その後、自社ビルから帰路につこうとした千明の前に現れたのは吾郎だった。吾郎は、この日一緒に食事をしていた勝見と事務局長の国分寺努(六角精児)から話を聞き、千明が吾郎に自社ビルを見て欲しい、吾郎に戻ってきて欲しいと思っていると教えられたと言う。「一人で大変だったね。」全てを見透かされながらも、それを強がって隠そうとする千明は、強引に吾郎の腕を掴み家に戻る。

海外を旅していたと言う吾郎の話に興味津々な奈々美。「一生懸命にやってごらん。楽しいと思える瞬間に絶対出会えるか。」今いるところで、今やるべきことを楽しめないなら、どこに行ってもうまくいかないと教えられてた奈々美は、考えを改め、受験して高校に行くことを約束する。それは、千明が初めて「手料理」を作った日でもあった。

こうして教師として千葉進塾戻った吾郎。国分寺の提案で千葉進塾に「補習コース」が復活することになる。それは自社ビルを建てる時に千明がこだわった「用務員室」で無償で行われ、千明と吾郎が担当することになる・・・。

現在。
吾郎の原稿を読み進め、二人いれば塾に行けない子供たちを助けられる!と飲みの席で訴える吾郎の孫の一郎(工藤阿須加)。その考えに共鳴したのは、教育学部の大学生、井上阿里(岡本玲)だった。吾郎の著作のファンだと言う阿里は、後日、吾郎の書きかけの「みかづき」を読むために一郎とともに吾郎の家を訪れる。原稿を読み進め驚く阿里に一郎は答える。「ばあちゃんの夢は、まだまだ続くんだ」

奈々美がカナダに留学していた平成の頃。蕗子のもとを訪れた千明は、「私立学校を立ち上げるから力を貸して欲しい」と蕗子に話を持ちかける。夫と離婚し一人で一郎を育てていた蕗子は、母の突拍子もない提案に困惑する・・・。

第5話(終)|永遠に満ちることのない三日月

「お母さんのところにはいきません。」私立学校を買い取る計画があるから、講師としてその学校で働いてほしい。千明(永作博美)からそう誘われた蕗子(黒川芽以)だったが、給食費も払えないような家庭の子供たちに寄り添っていきたいと、その誘いを断固として断る。千明はすんなりと蕗子を諦めるが、その期待は当時小学生だった蕗子の息子、一郎(工藤阿須加)に向けられていた・・・。

6年後。蘭(大政絢)が立ち上げた個別指導塾「オーキッドクラブ」の経営状況を知った千明と吾郎(高橋一生)は、世代交代の波を感じ、時代が大きく変化していることに驚く。20代より上の教師を在籍させないなどの時流に乗った「オーキッドクラブ」だったが、非常勤講師の大学生が、女子中学生の塾生に援助交際を斡旋したことが発覚。蘭は、その女子中学生が講師に援助交際を依頼していたこと、さらにそれが、家庭で苦しい思いをしていた生徒が家から出たいと願っていたことから起こした事件だったと知る。塾経営の難しさを知った蘭だったが、結局これを機に「オーキッドクラブ」は廃業、さらにその影響を受けて千明の私立学校設立の夢も立ちいかなくなり塾業界から身を引く決意をした千明。吾郎はそんな千明に、「ご苦労様でした」と、これまでなりふり構わず塾を成功させようと突き進んできた苦労をねぎらい千明を抱き寄せる。翌年、蘭は高齢者向けのお弁当屋を立ち上げ、経営が軌道に乗り始める。

その後歳月は流れ、白髪が増えた、千明は母、頼子(風吹ジュン)と同じ病に倒れ入院生活が始まる。その頃、カナダでツアーコンダクターをしていた菜々美(桜井日奈子)も異動とともに帰国。千明の後を継ぐのは誰か?そんな話をしていた蕗子、蘭、奈々美と千明たち。血の繋がりのないことなど、それぞれにわだかまりを持っていた姉妹たちだったが、「血が繋がっていようがいまいが、私たちは大島家の娘だ」とお互いに心のうちを打ち明け、長年のわだかまりは消えていく。

「欠けているからこそ、満ちよう、満ちようと懸命になれた。永遠に満ちることのない”みかづき”でいるの、私、結構好きかな。」二人で見た最後の”三日月”の夜に、千明と吾郎は病院のベンチで、そんな話をしていた。

千明の死の一年後、蘭の経営するお弁当屋でアルバイトをしていた一郎(工藤阿須加)。井上阿里(岡本玲)の協力を得て、配達先の永澤寛子(小柳友貴美)の家で子供たちに無償で勉強を教えていた一郎だったが、生徒に想いが伝わらないことから、自分には向いていないのではないかと思い始める。吾郎が執筆中だった「みかづき」が出版された頃、一郎は三姉妹から子供たちに勉強を教えていることをこれからも続けていく決意があるのかと問い詰められる。

「この先の物語の続きはお前が作ってくれ」迷っていた一郎の背中を押したのは、吾郎の言葉だった。こうして、阿里とともに子供たちに教えられる場所探しを始めた一郎。一郎と阿里のやろうとしていることに、「千葉進塾」の塾長、国分寺努(六角精児)からも協力すると言われる。寛子の家が引き払われる日、部屋の片付けをしていた一郎と阿里の元にやってきたのは、一郎から宿題をしてこなかったことを叱られていた小学生の萌(知久杏朱)。萌は、学校でまともに相手にされず苦しい思いをしていたが、一郎が叱ってくれたことが嬉しくて宿題を頑張ったのだという。一郎と阿里は、萌の様子を見て、自分たちの想いが、子供たちに届いていることを実感するのだった。

吾郎は書斎で一人、生前の千明と病室で話していたことを思い出していた。これまで吾郎の著作を一度も読んだことがなかった千明が、初めて読みたいといった本。それは、当時執筆前の「みかづき」だった。千明に近い未来のことを話して欲しいと言われた吾郎は、今度書く本は千明とのラブストーリーを描くと伝える。そのことを聞いた千明は、その本を「不肖の孫、一郎に捧げましょう。読むのが楽しみだ」という。しかし吾郎は、それ以上千明の目を見ることができずうつむいてしまう。千明の命がもう先の長くないことを共有しあっていた二人。そのとき千明は吾郎の手に手を重ね言葉をつぐ。「ありがとう、あなたに会えてよかった」

千明と吾郎が、塾教育をめぐり激しくぶつかり合わざるを得なかった、これまでの人生が走馬灯のように吾郎の頭を駆け巡る。

書斎で椅子にもたれて上を向く吾郎の視線の先、ガラス越しの夜空には、今日も決して満ちることのない三日月が浮かんでいた。

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